歯の神経をできるだけ残すために|歯髄温存療法
虫歯が歯の神経(歯髄)まで進むと、炎症の程度によっては、神経を取り除く「抜髄」が必要になります。これは痛みの原因を取り除き、歯の根や周囲の骨へ感染が広がるのを防ぐための治療です。
もし神経を取ったとしても、歯根に土台や被せ物で形を整えることで、再び噛めるようにはなります。ただし、虫歯や治療によって歯が大きく削られた歯は、割れたり折れたりしやすくなったり、神経を取った後に歯が変色することもあります。
こうした負担をできるだけ避けるため、神経を残す方法として行われているのが「歯髄温存療法」です。虫歯が深くても、神経の状態などの条件が合えば、神経をすべて取らずに治療できる場合があります。
当院の歯髄温存療法では、神経(歯髄)を保護するために、MTAセメントという歯科用材料を使用します。
MTAセメントは、細菌の増殖を抑える性質があり、治療した部分をしっかりと封鎖できる材料です。虫歯を取り除いた後に使用し、細菌の侵入を防ぎながら神経を保護します。
このMTAセメントで、感染部位を封鎖することで、虫歯が神経の近くまで進んでいたり、神経に達していたりしても、神経の状態によっては抜髄を避けられる場合があります。ただし、神経が生きていれば必ず残せるわけではなく、炎症の程度などを確認して判断する必要はあります。
MTAによる歯髄温存は、すべての歯に適応できる治療ではありませんが、神経を残すための選択肢の一つです。当院では診査・診断のうえで、歯髄温存で神経を残せる可能性がある場合、治療の見通しや費用(自由診療)をご説明します。
※1)Farsi らは可逆性歯髄炎と診断された幼弱永久歯(30 歯,経過観察期間 2 年)で 93%の成功率,Bogen らは正常歯髄あるいは可逆性歯髄炎と診断された症例(53 歯)への最長 9 年の経過観察で,97.9%の成功率を報告している
MTAセメントは、カルシウムを含む成分を主原料とした歯科用材料です。生体親和性が高く、歯や周囲の組織になじみやすい性質があります。
MTAセメントは固まる際にわずかに膨張し、歯とのすき間をふさぎます。この密閉性によって細菌が入り込みにくくなり、再感染のリスクを抑えます。
MTAセメントは強いアルカリ性を示すため、細菌が増えにくい環境をつくります。この性質が、歯や神経を細菌から守る働きにつながります。
MTAセメントは完全に乾燥させることが難しい歯の内部でも使いやすく、湿った口腔内でも問題なく処置・硬化できます。
MTAセメントを使った治療は、歯の神経を残すための選択肢の一つです。ただし、歯の状態によっては適応できないため、治療を望まれる方は次の点をご理解頂く必要があります。
MTAセメントによる歯髄温存は公的保険の適用がない自由診療です

歯の神経を残せるかどうかは、現時点での虫歯の進行や神経の状態によって異なります。また、歯髄温存療法があればやりたくても、それに医院側が対応していなければそのチャンスすら失ってしまいます。
ですから「神経を取る必要がある」と説明され、残す方法がないか確かめたい場合は、抜髄治療を受ける前に歯髄温存療法に対応する歯科医院で意見を聞くのも一つの方法です。ただし、それでも歯の状態によっては、別の歯科でも神経を取る治療が必要という診断になる可能性はあります。
当院では、診察・検査で神経を残せる可能性を確認し、治療のメリットとデメリットをお伝えします。患者様のご希望も伺いながら治療方針を決めますので、神経をできる限り残すためにも、強い痛みが出るまで待たず、早めにご相談ください。